公務員のなり方教えます【公務員受験指導のプロ教員が徹底解説】


公務員への就職や転職に興味があるけれど、いざ調べてみると公務員試験のシステムの複雑さに度肝を抜かれて心が折れそうな方はいませんか?

私は大学や大手公務員試験予備校等で多くの公務員志望者の指導を担当してきましたが、実は公務員試験の第一の関門はその複雑な試験システムの理解にあります。

本記事では公務員受験に関心のある初心者の方に向けて、公務員試験の内容をなるべく噛み砕きながら丁寧に解説します。

公務員試験は国家系と地方系で採用試験が大きく異なる!

公務員は国家公務員と地方公務員の2つに大別されています。​

そして、どのような職種の公務員になる場合も独自の採用試験である公務員試験の合格が必須です。

公務員試験は第一次試験の筆記試験と第二次試験の人物試験に分かれていて、一次試験を突破した受験生だけが二次試験以降の試験にお呼ばれされると言うシステムになっています。

第一次試験(筆記)
第二次試験(人物)
  • 教養択一試験
    (基礎能力試験)​
  • 専門択一試験​
  • 論文試験​
    ・小論文
    ・専門記述​
  • 応募書類​
    ・履歴書、自己PR作文​
    ・志望動機書​
  • 面接試験​
    ・個人面接、集団面接​
  • その他形式​
    ・集団討論​
    ・グループワーク

職種や採用区分も細かく分かれていて、それぞれ異なる採用試験が実施されています。​

なお、一般的には筆記試験は国家公務員の方がハードで、地方公務員の方が人物評価をしっかりと行う傾向にあることを頭に入れておいてください。

国家公務員の採用試験

国家公務員の採用試験は、試験実施元が人事院と各機関に分かれて実施されます。

人事院
各機関
  • 総合職採用試験
  • 一般職採用試験
  • 専門職採用試験
    (国税・財務・労基など)
  • 専門職試験
    (外務、防衛、司法など)

国家総合職&一般職ってどんな仕事?

まず、採用試験実施元の人事院の公式定義からご紹介します。

  • 総合職は政策の企画立案等の高度な業務に携わる職員​
  • 一般職は事務処理等の定型の業務に携わる職員​

皆さんが普段よく耳にする「厚生労働省」とか「経済産業省」などの省庁で勤務するような国家公務員になるには、人事院で実施される総合職採用試験又は一般職採用試験を突破することが必要です。

こうした省庁職員の中でも【キャリア官僚】と呼ばれるようなポジションとなるためには、総合職採用試験で採用されることが必要です。

国家専門職ってどんな仕事?

専門職試験(国税、財務、労基など)​
・特定の省庁で専門的な業務に従事する職員を採用​
・国税専門官、財務専門官、労働基準監督官など

専門職試験(外務、防衛、司法など)​
・特定の省庁で専門的な業務に従事する職員を採用​
・外務省・防衛省専門職員、裁判所職員、国会職員など

国家公務員試験の配点比率

国家一般職(大卒程度)の配点割合
基礎能力試験
22%
専門択一試験
44%
論文試験
11%
面接試験
22%
国税専門官(大卒程度)の配点割合
基礎能力試験
22%
専門択一試験
33%
論文試験
22%
面接試験
22%

国家公務員試験はこの後紹介する地方公務員試験と比べると筆記試験のウエートが非常に重いです(基本的には専門試験が必須です)。

地方公務員とは?

地方公務員の採用試験は、都道府県職員(広域自治体職員)と市町村職員(基礎自治体職員)に分かれます。

都道府県職員
(広域自治体職員)
市町村職員
(基礎自治体職員)
  • 事務系職種
  • 技術系職種
  • 資格免許職種
  • 公安系職種
  • 事務系職種
  • 技術系職種
  • 資格免許職種
  • 公安系職種

政令指定都市とは?

令指定都市とは、都道府県と同格の扱いを受ける大規模都市​
例:札幌市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市など​

地方公務員にはどんな仕事がある?

・事務系職種
県庁・市役所・出先機関に勤務して行政全般の業務に幅広く携わり、自治体の幹部候補のキャリアとなる​

・技術系職種
「土木」「建築」「機械」などの専門分野に関する部署に配属され、専門知識を活かした業務に携わる​​​

・資格免許職種
「看護師」「臨床検査技師」「栄養士」「保育士」​
「幼稚園教諭」などの資格や免許が必要な業務

公安系職種
「警察官」「消防官」など地域や住人の安全を守る職種

地方公務員試験の配点比率

東京都特別区(1類)の配点割合
教養択一試験
9%
専門択一試験
9%
論文試験
27%
面接試験
55%
横浜市(大卒程度)の配点割合
教養択一試験
2%
論文試験
2%
面接試験
95%

地方公務員試験の難しいところは一次試験を突破するだけの学力は求められるけれど、最終的な合否は全て人物審査で決まるとところにあります。

しかし、勉強を開始したばかりの方にくどく強調しておきたいことは、一次試験を突破しない限り面接にお呼ばれされることはまずありませんので、しのごの言わず、まずは筆記に集中することが重要です。

意外と複雑!採用試験の名前と区分を整理しよう​

公務員試験の全体像がある程度掴めたところで、「さあ、情報収集だ!」となった時に一度はみんなぶつかる壁があります・・・!

それは公務員試験特有の業界用語満載の試験名です。一度理解しておけばなんてことはないので、ここで簡単に整理しておきましょう。

例えば、地方公務員試験では採用試験が以下のように表記されることが多いです。

職種採用試験名
市町村○○市/○○市(大卒程度)など
都道府県○○県上級/○○県種/○○県大卒程度)
政令指定都市 ○○市上級/○○市(大卒程度)
東京特別区 特別区
  • 大卒程度:上級、Ⅰ種、A試験、など
  • 短大卒程度:中級、Ⅱ種、など
  • 高卒程度採:初級、三種、など
  • 社会人採用枠:経験者枠、社会人枠など
  • その他:氷河期世代採用障がい者採用など

公務員になるにはどんな方法が?

一般採用枠で受験する場合

公務員試験は基本的には、年齢要件と国籍要件を満たしていれば基本的には誰でも受験可能です。​

一般受験要件

・年齢要件(概ね30歳程度まで受験可能)​
・国籍要件(緩和傾向にある)​
・学歴条件(一部自治体のみ)​
・専攻要件(一部試験種のみ)​
・資格免許要件(一部試験種のみ)​
・欠格条項に反しないこと​​

これを見ると「年齢だけ気にしていれば良い」といった割には学歴の要件もあるやんけ!と思われた方もいると思います。

実は、「4年生大学の学士が必須」「大学院修士課程の学位が必須」といった本当の意味での学歴の要件を課している公務員試験は非常に少数で、多くの試験では「高校卒業程度」「大学卒業程度」といった『○○卒程度』という形での要件の書き方をしています。

そして、この『○○卒程度』と言うのは実は学歴要件ではないのがミソです。

公務員試験採用区分『〇〇卒程度』とは・・・?​

公務員試験の受験案内には、「大学卒業程度(I種・上級など)」や「高校卒業程度(III種・初級など)」の記述があるが、これらは学歴要件を意味するわけではなく、試験問題のレベルを示している。「大学卒業程度試験」と記載してる試験であっても、必ずしも4年制大学を卒業または卒業見込である必要があるわけではなく、近年は学歴要件を課す試験種は減少傾向にある。​

なお、高校卒業程度試験には、高校卒業見込み及び卒業後2年以内などの要件が設けられていることが多く、大学生や大卒の社会人の方は、受験資格の観点から受験できないケースがほとんど。

社会人経験者採用枠で受験する場合

近年、公務員試験で増えてきている採用枠で、5年程度の職歴を求める代わりに年齢制限の上限が撤廃された採用枠です。

一般枠だと年齢制限に引っかかってしまうけれど、職歴はあって公務員に転職したい方はこの採用枠で受験することになります。

社会人経験者枠受験要件

・年齢要件(概ね59歳程度まで受験可能)​
・職歴要件(5年程度の職歴が設定されていることが多い)
・国籍要件(緩和傾向にある)​
・学歴条件(一部自治体のみ)​
・専攻要件(一部試験種のみ)​
・資格免許要件(一部試験種のみ)​
・欠格条項に反しないこと​​

なお、社会人枠で受験しようとする場合、多くの人にとって重要となるのは「職歴要件を満たしているかどうか」になります。

ここで、横浜市(令和2年度社会人採用試験)の必要業務従事年数​の例で説明しておきます。

必要業務従事年数​の記載例

「民間企業等における職務経験を平成25年7月1日から令和2年6月30日までの間に5年以上有する人。​」

職務経験について

「民間企業等における職務経験」には、会社員、自営業者、アルバイト、パートタイマー、公務員等としての経験が該当します。また、財団法人、社団法人、NPO法人等の経験も含まれます。​

「5年以上」とは、それぞれの企業・団体等で休憩時間を除き、週30時間以上の勤務を2年以上継続し、これらの経験が通算で5年以上であることを要します(同時期に複数の企業・団体等に勤務していた場合は、労働契約の相手方が同一である場合を除き、いずれか一方の勤務期間のみを職務経験とします)。​

ここでポイントとなるのは勤務時間の要件と勤務年数の通算要件です。

まず勤務時間ですが、これは週30時間とあるので、フルタイム(1日8時間)を4日以上働いていればOKとなります。

通算要件については注意が必要で、職歴としてカウントするのは2年以上の勤務が続いた場合のみだとされています。

例えば、A社週5フルタイム勤務3年、B社週5フルタイム勤務1年、C社週5フルタイム勤務1年だと、職歴5年とは見なされず、職歴3年としか見なされないということになります。

転職回数の多い方は要注意です。

欠格条項ってなんぞ?

結論から言うと、前科や国家転覆の企てに関与していなければほぼスルーで問題ありません(笑)

欠格条項

1.成年被後見人,被保佐人(準禁治産者を含む)

2.禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者又はその刑の執行猶予の期間中の者、その他その執行を受けることがなくなるまでの者

3.〇〇として懲戒免職の処分を受け,当該処分の日から2年を経過しない者

4.日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

公務員は国に雇ってもらうわけなので、特に「4」の国家転覆への関与は問題外と言うことでございます・・・。

受験についての公式情報は省庁・自治体の公式採用HPから入

公務員試験の採用情報詳細は志望自治体のHPから入手します。

また、今時の公務員試験では多くの自治体で願書はWEBで受け付けになっていて、情報収集はWEBが中心です。

定期的に志望自治体のHPを確認する癖をつけましょう。

公務員試験についての基本知識

公務員試験の日程と併願について

公務員試験は大卒程度一般枠採用試験は例年5月〜6月に集中していて、高卒程度採用枠と社会人採用枠の試験は例年9月〜10月に集中して実施されるスケジュールになっています。

上記以外にも変則的なスケジュールで実施される試験もあり、全て含みで見ると一年中どこかで公務員試験が実施されている状況です。

また、公務員試験は日程がかぶらなければ基本的には併願可能です。

多くの受験生は、リスクを回避するために3~5の省庁や自治体を併願する傾向にあります。​

併願パターン
幅広く併願国家総合職、特別区Ⅰ類or東京都Ⅰ類B、裁判所一般職(大卒)、国家専門職、​
国家一般職(大卒)、地方上級(県・政令指定都市)、国立大学法人等、市役所B日程、市役所C日程、独自日程の市役所​
地方公務員のみで併願特別区Ⅰ類or東京都Ⅰ類B、地方上級(県・政令指定都市)、市役所B日程、市役所C日程、独自日程の市役所​
国家公務員のみの併願国家総合職、裁判所一般職(大卒)、国税専門官or財務専門官or労働基準監督官、国家一般職(大卒)​
教養試験のみで併願東京都Ⅰ類B(新方式)、市役所A日程、市役所B日程、国立大学法人等、市役所C日程、独自日程の市役所​

「とにかく、公務員に就職・転職する!」という不退転の決意で挑む場合、2〜3の併願は必須でしょう。

しかし、公務員受験はかなりパワーの必要な受験なので、現実的にはいくらでも併願できるという代物でもないと言うことは覚えておきましょう。

公務員試験の受験料

公務員試験の受験料は無料です。

大学受験のように一校数万円の受験料がかかる訳ではないので、複数併願したとしても交通費や人によっては宿泊費程度の経済的負担で済みます。

​・・・ただし、公務員試験は公費(税金)で運営されているので、バックレは厳禁!!

申し込みをした場合は責任をもって受験しましょう

やることがたくさん!公務員試験のスケジュール例

ここでは、モデルケースとして6月に一次試験が実施される公務員試験を例に、受験のスケジュール例をご紹介します。

地方上級・市役所試験のモデルケース(6月試験実施)

例年4月頃
出願

出願の際にESを提出します。

この段階で履歴書・職務経歴書、志望動機書、自己PR作文の提出が必要となります。

ここで提出する内容は面接まで引き継がれるため、ある程度の準備は必須です。

例年5〜6月頃
第一次試験

ここで筆記試験(教養択一、専門択一、論文)が実施されます。

例年7月頃
第二次試験

第一次試験の合格発表とともに、面接試験の案内が届きます。面接は複数回実施されることが一般的です。

例年8月頃
最終合格

面接試験に合格すると最終合格=採用名簿に名前がのります。

例年9月頃
採用面談〜内定

最終合格者に対して採用面談が実施され、これで晴れて内定獲得となります。

正確には「最終合格≠内定」

※正確には「最終合格=採用名簿に載ること」である。最終合格しても、採用内定されなければ(理論上)公務員になれません。​

しかし、これまでの地方上級・市役所の採用試験で最終合格者が採用されなかったことは一度もないらしい。​

​公務員試験の合格判定

試験科目の実施状況

何の科目が課されるのかをざっとまとめました。

以下の表で、「○:必須、△:一部試験でのみ実施、×:実施なし」として確認しましょう。

科目名国家県庁・政令市市町村
教養択一
専門択一
専門論文※注釈
小論文
面接

※地方公務員試験では、都庁で専門論文試験が課されます。

全ての公務員試験で教養択一・論文・面接の出題は必須です。​

現在、専門試験は上位試験(国家、東京系、県庁・政令市)でのみ課されている状況です。

全体的な傾向として、公務員志望者が減少傾向にあることと、人物重視の選考にシフトしてることから、筆記試験の科目数は減少傾向にあります。

合格ラインと足切りラインについて​

筆記試験は教養択一試験6割、専門択一試験で7割程度の得点率で合格可能です。​

最終的合格は筆記通過者の中での人物試験の相対評価で決定します。

最終的な合格難易度はそのときの受験生の質に大きく依存し、受験生の質は自治体のブランド力とある程度相関すると言えるでしょう。

試験名形式配点/満点配点比率
(地方
配点比率
(国家)
基準点
筆記試験教養択一試験​5肢択一​各1点/40点​15%​22%​約3割未満​
専門択一試験5肢択一​各1点/40点​14%45%​約3割未満​
論文試験記述式5段階評価​14%​11%​最低評価​
人物試験面接試験​・個別​
・集団​
5段階評価​57%​22%最低評価​

基準点はいわゆる足切りライン

どの自治体でも基準点が設定されていると考えられる(明示されていないことが多い)。​基準点は満点の3-4割程度とされていることが多いため、これを下回る程に不得意領域を作ることはできない。​人物関係の科目ではA-Eの5段階で評価され、一つでもE評価(最低評価)がつくとその時点で不合格が確定する。​

地方公務員試験の合否判定は大きく以下の2方式

・総合評価方式:全試験科目の総合得点で最終合格を決定する方式​

・リセット方式:1次試験終了後持ち点がリセットされ、面接だけで最終合格を決定する方式​

※多くの都道府県庁、政令指定都市、市町村の試験では『リセット方式』を採用している。明示していなくても、配点上は実質リセット方式であることが多い。

倍率について

最後に試験難易度のイメージを掴むために、倍率を掲載しておきます。

県庁クラスの最終倍率は4倍程度

採用予定数受験者数1次合格者数最終合格者数倍率
北海道 一般行政A(第1回)​100​748​101​91​3.9
埼玉県 一般行政​193​1,260​756​333​3.8
東京都 Ⅰ類B(行政一般方式)​265​1,626​ ​352​4.6
東京都 Ⅰ類B(行政新方式)​90​494​ ​115​4.3
愛知県 行政Ⅰ​130​769​384​208​3.7
大阪府 行政22-25​115​639​578​181​3.8
広島県 行政一般事務A​55​306​148​74​4.1

・倍率のレンジは、概ね3倍~7倍程度​

・都道府県では特に、首長の変更や政策転換等による職員採用数減が大きく影響することもある​

・2020年は試験日程が変更となった自治体を中心に倍率が低下したが、国家公務員と比べると低下率は低め。​

政令市は5倍程度で推移しているが、市役所によりバラツキがある。

採用予定数受験者数1次合格者数最終合格者数倍率
札幌市 一般事務​155​756​252​147​5.1
仙台市 事務​90​623​126​98​6.4
特別区 Ⅰ類​906​8,121​4,791​1,740​4.7
横浜市 事務​260​1,918​1,222​381​5.0
名古屋市 行政一般​100​623​306​125​5.0
大阪市 事務行政22-25​240​734​403​282​2.6

・倍率のレンジは、概ね4倍~10倍程度​

・全般的に教養試験+専門試験の方が倍率が低く、教養試験のみ方が倍率が高い傾向​

・名古屋市(行政一般)は専門試験なし、大阪市(事務行政22-25)は適性試験+論文or択一式(法律)と、試験科目が少ないために高倍率の傾向にあったが、採用予定数が増えているために近年は倍率は低下傾向。​

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