文章理解文章理解の問題(No.3)
次の文の内容と合致するものとして最も妥当なのはどれか。 能にしても歌舞伎にしても 舞台空間は均一な意味の場ではない。そこには 正面というものがあり その正面を決めるのは 能の場合ならば貴人の席であり 歌舞伎ならば劇場の入口に掲げた櫓である。しかしそのような大枠の内部で 例えば具体的に上手と下手では意味が違っていた。『助六』や『勧進帳』で見たように 上手には力の起原があり 下手にはその力を受ける側が配されるのだが そのような受苦によって成立する人物に 実は最も劇的な構造が託されている。歌舞伎では 江戸時代の社会的な力関係を反映して 女性の役が受苦の側に回ることが多いのだが その女性を演じるのは女形であった。その意味では 歌舞伎の劇構造を下から支えていた女形によって歌舞伎が生き続けているのも 謂れのないことではなかった。 我々が歌舞伎の舞台から本能的に学んでいることに こうした舞台空間の意味論がある。あるいはこう言ってもよい。意味的空間としての舞台という場の感覚であると。これは 一般に「居所」という言葉で表されるが 居所の良し悪しは 演技する者にとって決定的である。書かれてはいないが 舞台空間にはそれを律する一つの文法があり 伝統演劇の実践はそれを顕在化してくれる。上手・下手の空間把握は 実は歌舞伎を越えて 新劇の場にも共有されている。更に驚くべきことは 新劇をも越えて 現代の日本人の舞台的想像力を規定している点である。例えばテレビなどの画面でも レギュラーのキャスターに対して「お客様」は向かって右手 つまり上手に坐らせるのが常識だが これは日本に固有の約束事のようである。例えばフランスのニュース番組などに大臣が出演しても キャスターのほうが右手にいて一向に痛痒を感じないからである。
- 1演技する者にとって 「居所の良し悪し」を感じ取る力は重要であり これは伝統演劇を学ぶこ とによってのみ得ることができる力である。
- 2テレビにおけるキャスターと「お客様」の上手と下手の約束事が日本にあってフランスにないの は フランス人に比べて日本人の方が舞台的想像力が低いからである。
- 3能と歌舞伎では正面を決める基準となるものが異なっていることから その舞台空間がもつ意味は異なっている。
- 4現代の日本人の舞台的想像力を規定している 上手・下手の空間把握は 歌舞伎や新劇の場と共有されているものである。
- 5江戸時代の社会的な力関係を反映して 歌舞伎では女性の役が受苦の側に回るだけでなく それを演じる女形についても厳しい扱いがされてきた。
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正答は 4 です。